路線価等により時価計算が困難な理由
相続税や贈与税の申告時における不動産価格の計算にあたって、または不動産取引の参考価格として相続税路線価や固定資産税評価額に基づく場合が多く見られます。
これらは公的価格といわれ、公平で客観的な価格であるという長所があります。しかし、以下の点により、公的価格に基づく計算では不動産の時価を把握することが困難な場合があります。
公的価格の目的が異なる
相続税路線価は国税庁、固定資産税評価額は各市町村が各主体となっており、同じ土地でも価格水準が異なる場合があります。
評価の時点が異なる
公的価格の評価時点と現時点との時間差が避けられず、時価と乖離する場合があります。
例えば、相続税路線価の評価時点は毎年1月1日ですが、時価を計算する時期がその年の6月であるケースでは、6カ月の時間差あり、この間に不動産価格が変動していた場合、相続税路線価と時価は乖離していることになります。
相続税路線価(土地)の個別性
土地には、角地や不整形といった個別性があります。
対象となる土地価格の計算過程において、こうした個別性についてプラス・マイナスを付ける際、相続税評価額を求める際の計算を使用することも一つの方法といえます(※)。
ただし、不動産の個別性のプラス・マイナスの程度は、その土地が属する地域や地上建物の用途等に応じて異なるものであり、時価の査定にあたっては、本来画一的な計算式で求め得るものではありません。
例えば、同じ角地であっても田舎の住宅地と都心部の住宅地では、同様の判断が出来ない場合があります。
※
財産評価基本通達にある画地補正率により、誰もが分かりやすく計算できるように画一的に決められています。
建物の評価
相続税の申告にあたって、建物は固定資産税評価額を基礎として計算されることが多くみられますが、この評価額は毎年一定額で減額する、といった画一的な経年劣化のみを考慮した計算方法により求められたものです。
この点、用途や利用方法により劣化が激しい建物は、画一的に経年劣化を計算した場合よりも資産価値が低くなります。また、適切に大規模修繕を行ったり、改築をしている場合は画一的に経年劣化を計算した場合よりも資産価値が高くなっているでしょう。
このように、建物の時価は画一的な計算だけでは把握できない場合があります。
収益物件の存在
一戸建て住宅の場合、土地がいくら、建物がいくら、というように土地と建物の価格を別々に把握することも可能であるといえます。
ただし、賃貸マンションや賃貸ビルといった収益物件の場合は、土地と建物一体から収受される賃料等の収益により不動産の価格が決定されるため、土地建物ごとに価格を計算することはこうした不動産の性格に適合した方法とはいえません。
また、収益物件の価格は、土地建物一体から収受される収益を利回りで還元することにより査定することが一般的ですが、利回りの判断は不動産事情に精通している必要があります。
権利関係が複雑な場合(共有持分や借地権等)
【共有持分】
一般的に、共有持分のみの買主を見つけることは通常困難であり、その需要は低くなります。このため、共有持分の不動産価格は低くなることが多くなります。
ただし、需要者(買主)が誰なのかによっても価格は変わってくる可能性があるため、特別の留意が必要になります。
【借地権】
財産評価基準書(路線価)にある借地権割合を用いることが一般的となります。
ただし、地主との契約内容、地代や保証金・権利金の内容、建物の建築年等によってはこの割合と乖離する場合も見受けられます。